特集 図説 胃と腸用語集2012
疾患〔胃〕
HIV関連性胃病変(HIV-associated gastric lesions)
藤原 崇
1
,
門馬 久美子
2
1がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科
2がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科
キーワード:
Kaposi肉腫
Keyword:
Kaposi肉腫
pp.752
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113333
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
HIV(human immunodeficiency virus)感染者の消化管病変として問題となるのは,感染症と腫瘍性病変である.HIV関連性胃病変のうち,感染症としてはサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)感染症が,腫瘍性病変としては悪性リンパ腫およびKaposi肉腫がCD4値の低下とともに発症する可能性が高くなる.ただし,HIV感染者におけるCMV感染症の消化管病変は,食道および大腸での発症頻度が高く,胃のみに粗大病変を形成することは少ない.また,HIV関連悪性リンパ腫は,DLBCL(diffuse large B-cell lymphoma),Burkitt's lymphomaの頻度が高い1)とされるが,その形態は,非HIV感染者の悪性リンパと比べ,差異はない.
Kaposi肉腫は,1872年にハンガリーの皮膚科医Motitz Kaposiによって最初に報告された,HHV-8(human herpesvirus-8)の感染によって生じる非上皮性悪性腫瘍である.HIV感染者における悪性腫瘍で最も多く,CD4値の低下とともに好発するが,CD4値が500cell/μlと比較的高値から発症することもある.Kaposi肉腫の発症は,HHV-8の生体内でのリザーバーであるB細胞から血管内皮細胞への感染によるとされており,発生部位としては皮膚が最も多いが,全消化管,肺,リンパ節などにも生じる.消化管Kaposi肉腫は無症状のことが多いが,時に消化管出血や狭窄の原因となる.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.