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ヘルペス食道炎は,三叉神経節に潜伏感染しているHSV(herpes simplex virus)が再活性化し唾液中に排出され,食道重層扁平上皮に感染することにより発症すると考えられている.まれな疾患であり,多くは免疫抑制状態で発症するが,健常人での報告例もある.内視鏡所見は,初期には小型で辺縁がやや隆起し中央に浅い潰瘍(Fig. 1a)を形成する,いわゆるvolcano ulcerとして観察され1),進行に伴い潰瘍は癒合する(Fig. 1b).これらの所見は,病初期に形成された小水疱が破裂し癒合した像と推測されるが,実際に水疱が観察できるのはまれである.病理所見では,感染細胞にCowdry A型核内封入体やすりガラス様変化を来した核内封入体が多数出現するなどの特徴がある.免疫染色によるHSV抗原の検出やPCR法によるウイルスDNAの検出なども有用である.
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)食道病変は,主にHIV(human immunodeficiency virus)感染者において発症し,非HIV感染者での発症は極めてまれである.CD4値が100cell/μl以下で好発する.CMV antigenemiaは陽性となることが多い2).症状は,嚥下痛,嚥下困難,心窩部痛などを主訴とすることが多い.病変は多発する傾向があり,大きさは数mm~数cmまで様々である.内視鏡的には,潰瘍底に白苔を伴わない打ち抜き潰瘍(Fig. 2a)が典型的とされるが,不整形や地図状のびらんや浅い潰瘍(Fig. 2b)を形成することも少なくない.病理組織学的には核内封入体を認め,CMVの免疫染色で陽性となるが,生検での陽性率は低いため潰瘍底より複数個の生検を行う.治療は,ガンシクロビル,ホスカルネットなどの抗CMV薬で行う.
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