胃と腸ノート
直腸はコロノスコピーにおける盲点である
長廻 紘
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.442
発行日 1987年4月25日
Published Date 1987/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112741
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大腸の内視鏡検査はルーチン検査として完全に定着した.器具・挿入法も欲を言えばきりがないが,ほぼ満足しうる域に達したと言える.残されたのはいかにしてより満足のいく,密度の濃い検査をするか,である.
大腸は長くひだが多い.上部消化管の内視鏡検査に比べて挿入自体に時間とエネルギーをとられるうえに観察盲点が多い.全大腸を胃に匹敵する精度で観察するのは容易でない.しかしそれでも回盲部までスコープを挿入して抜いてくれば終わった気がするのは,“スコープが通過した部分の観察は十分である.見えたものは存在し,見えなかったものは存在しない”という暗黙の前提があるからである.大腸の炎症は広い範囲を占めるので必ず見つかるし,見つからない程度の小病変を無症状患者に見つけても意味がない.腫瘍は大腸では突出している(ポリープ)から小さくても必ず観察でき,小発赤や小びらんが胃におけるように癌であることはありえないから,大腸は通過するだけで事足りる,と思っている人が少なくない.
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