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書評「コロノスコピー」
小林 世美
1
1愛知県がんセンター消化器内科
pp.628
発行日 1989年6月25日
Published Date 1989/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106473
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新谷博士の「colonoscopy」の英文版の初版が出て早7年,医学書院発刊の単行本では未曽有の売れ行きとか聞いていたが,今度日本語版が出,更に読者層が拡がりそうだ.英文版の英語は,平易で大層読みやすく,日本語の訳書など不要と思っていたが,博士が日本国内向けに自分の言葉で語りかけたかった心情は十分理解できるし,実際読んでみて,実力を競うアメリカ社会の中で磨かれ,完熟をみた博士の堅固な思想と長年積み上げた学問が,訳者の助けを借りたとはいえ,一層の親しみをもって私共に近づいてくる.
私が彼のテクニックに初めてお目にかかったのは,1979年にニューヨークを訪れたときのことである.それまで他人の内視鏡テクニックをほとんど見たことのない私にとって,それは得も言われぬ素晴らしい体験であった.スコープを操る彼の両手の動きは,名曲を奏でる名バイオリニストの動きに似ていた,天賦の才だけでなく,それにも増して彼の人並みならぬ努力が偲ばれた.アメリカで外国人が生き抜くためには,彼らを凌駕し,圧倒する強い精神力と逞しさ,それにたゆまぬ努力が必要である.新谷博士は,まさにその類の人である.
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