胃と腸ノート
S状結腸もコロノスコピーの盲点である
長廻 紘
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.666
発行日 1987年6月25日
Published Date 1987/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112891
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従来のコロノスコープの挿入法は奥まで入れることを唯一の目的として記述されている.挿入法なのだから当然すぎるほど当然のことだが,重大な欠陥がある.すなわち小病変の見落としは必要悪だとのニュアンスが行間ににじみ出ている.挿入はいまや誰にでも比較的楽になったのだから,もう少し余裕のある,病変の発見を第一義とした挿入法の模索が求められる.病変発見のために少々寄り道をしても最終的に帳尻の合っている挿入法である.しかしコロノスコピーに関する手技は,気のきいたものにしろ,きかないものにしろ,とっくに出尽していて,今さら新しいアイディアはなく,新しいと見えるものでも二番煎じである.既存の考え方・方法をいかに有効に組み合わせていくか,というのが残されているにすぎない.
前回直腸がpitfallであるゆえんを述べたが,そうしたら大腸全体が盲点にみえてきた.例えばS状結腸である.同部は過伸展にならない―半月ひだが伸びない―状態で通過するのがsuccessful colonoscopyの要点であるが,そうするとポリープがひだに隠れたり,ひだの間に腸内容が溜まったりして,小病変が見落とされる可能性が大きくなる.スコープ挿入の巧拙・スピードと病変発見率は必ずしも相関しない.速く挿入して病変もよく見つける人もいるが,それは熱意と興味が人一倍あるパイオニアに特有の条件である.これからコロノスコープ人口が激増すると思うが,そういういわば第2世代においては,技術はあるが病変がみつからないといった事態が憂慮される.
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