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胆道疾患の一病態として胆石症を扱った著書は最近数多くみられるが,胆石症そのものを取り上げたものは少ない.周知のように,近年わが国における胆石症も胆石の種類,頻度,合併症などその実態は食生活,高齢化など社会環境の変遷に伴って大きく変化してきている.一方,経皮経肝胆道造影,内視鏡的逆行性胆道膵管造影をはじめとする直接胆道造影,胆道内視鏡,超音波診断などの検査法の進歩,コレステロール系胆石に対する溶解剤の開発によって胆石の診断,治療面における進歩はここ数年めざましいものがある.こうした意味から現時点における胆石症診療の実際について解説した本書の刊行は時宜をえたものといえる.
著者らはすべて胆石症の診療,研究の第一線で活躍されておられる方々である.数多くの経験例をもとにしてわかりやすく,要領よく,実際に即して書かれており,各項目別に今後の展望についてもふれられている.本書は大きく5つの章から成っているが,その特色として「初診から治療まで」という副題からも推測されるように,まず診断の進め方,重症度の判定,各検査法の利点と欠点,その診断上の位置づけなどすぐに診療面で役に立つ事項からはじまっている.各検査法の項では実施上の注意点とともに多数の写真,表が提示されており大変解りやすい.あえて希望を述べさせてもらえば,最近行われつつあるCTによる診断も取り上げられればと考えるが,胆石診断における意義,経済的な問題を考慮すれば,そのことで本書の価値が減ずるものでは決してない.次に黄疸,胆摘後症候群,再発,遺残結石,発癌,肝内胆石,胆道ジスキネジー,膵炎など胆石症の特殊病態とその取り扱いが述べられており,経口的胆石溶解剤をふくむ内科的治療,内視鏡的乳頭括約筋切開術,手術が詳述されている.胆石症の病態に応じた手術術式の解説は胆石患者の診療上,内科医にとっても大変参考になり,教えられるところが多い,第4章では診療に必要な基礎的事項として胆石の種類,成因のみでなく,胆道の病態生理についても胆石症との関連から要領よく記載されている.
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