--------------------
書評「Gastric Intrinsic Factor and Other Vitamin B12 Binders」
奥田 邦雄
1
1千葉大学医学部第1内科
pp.624
発行日 1975年5月25日
Published Date 1975/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112333
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
胃液内因子,ならびにその他のビタミンB12結合蛋白の研究は,約120年前にAddison,Biermerらによって悪性貧血の症例が記載されて以来,1926年Minotによる肝臓療法の有効性とそれに続くビタミンB12の発見,さらにCastleの胃液内因子の発見という歴史を経て現在に至っている.臨床的に悪性貧血は現在その名前と裏腹に,貧血の内でも良性に属しているが,一方,生命の追求という研究的側面から見ると,ビタミンB12の吸収とそれに関与する因子,生体内の輸送,貯蔵の様式,更に造血に対する関与形式等の面で未だに解決されていない多くの問題を含み,ホルモン等,他の物質と同様にその研究は生体の多方面に亘り多くの神秘さを提供してくれる.
さて,本書は以上のような多くの面のうちで,特に胃液内因子を中心としビタミンB12結合蛋白を綜説的にまとめたものである.序に記されているように,1970年Glass(N.Y.医科大学消化器研究室所長)がGlycoproteinと称される書物の内の胃液内因子,ならびにビタミンB12結合蛋白の項のために書き始めた近刊で,文献はup-to-dateである.本著の目的は今までに発表された情報を提供するということであり,そのために165頁中45頁が参考文献でしめられている.しかし,内容はこのような本にありがちな統一性に欠けるところがないのは著者Glassの実力を示すものであろう.また,参考文献がこのように多いことは専門家にとって有難いだけでなく,初心者に研究の緒を与えてもくれる.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.