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書評「免疫学からみた肝臓疾患―臨床免疫学叢書 5」
上野 幸久
1
1三宿病院
pp.650
発行日 1975年5月25日
Published Date 1975/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112354
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肝臓病と免疫については,わが国において,かなり以前から石井・山本教授,長島教授らによって研究されて来たものの,本格的にこれと取り組んでいた研究者は少なかった.肝炎の持続あるいは進展の機序として,PopperあるいはMackayらによって自己免疫の関与が提唱されて注目を集めたものの,体液性抗体だけで肝炎の慢性化を説明するには無理があった.
HB抗原(オーストラリア抗)原の発見により,肝疾患患者における肝炎ウイルスの長期持続感染という事実が明らかとなってから,自己免疫説は一時影が薄くなったかにみえた.ところが細胞性免疫とその異常が諸種疾病の成立に重要なかかわりあいをもつことが認識されるに到って,これが肝臓病の研究領域にも導入されるようになり,HB抗原の病的意義も,個体の免疫異常との関係において論議されるようになった.最近の肝臓病関係の諸学会,研究会では各施設からこの方面の発表が相次ぎ,T-Cell,B-Cell,MIFといった名前が多くの研究者の口から機関銃弾のように放たれ,肝臓病,とくに慢性肝疾患を論じるには細胞性免疫を中心とした免疫学的検索を行なっていないと相手にされ難いのが現状となっている.
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