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慢性胃炎の分類は,その研究の発展過程において,解剖学的立場,臨床的立場などさまざまの立場から分類がなされており,われわれも慢性胃炎の各種病型分類について考察を加えてきた1).現在,広く一般的に使用されている慢性胃炎の分類はSchindler2)による胃鏡的立場からの分類であるが,この分類は,当時の内視鏡器種の器械的制約により,主に胃底腺領域を対象としたもので,antral gastritisに対するfundal gastritisの分類に属するものであった.しかし今日,内視鏡器種の改良およびそれに伴う検査技術の進歩などにより,Schindlerの分類は幽門洞に対しても拡大されて適用されるようになり,さらに慢性胃炎の研究が進められてきた結果,fundal gastritisという表現にも自ら変化が生じているように思われる.
本来,fundal gastritisという表現は胃底腺領域の慢性胃炎という意味であるが,胃炎をKorpusgastritis,Antrumgastritisとする局所解剖学的分類から出発しているようである.しかしながら,これまで“体部胃炎”は稀であることが知られており3),さらに慢性胃炎の主体的変化と考えられている萎縮性胃炎については,胃全域からのいわばin vivoの組織診断といえる直視下生検による検索などから,幽門腺組織(偽幽門腺を含む)が口側に拡がる“Antralization”4)であるという考え方が支配的になってきたので,fundal gastritisという表現は次第に意味を失いつつあるといえる.しかし,萎縮性胃炎を“Antralization”と理解すると,幽門洞に萎縮性胃炎が認められる場合でも,認められない場合でも胃底腺領域に幽門腺組織が認められれば,ともに“Antralization”の範疇に入ることになるが,両者が慢性胃炎の病態の上でどういう位置にあるかは不明である.
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