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胃癌の発育進展過程を知るために,診断された胃癌症例の過去の検査資料を検討する,いわゆるRetrospective follow-up studyによって,多くの知見が得られ,すぐれた業績も多数報告されている.これらの業績によって,早期胃癌Ⅲ+Ⅱc型,ないしはこれに類似した肉眼型を呈する進行胃癌においては,癌病巣内の潰瘍が消長する,いわゆる悪性サイクルをたどる症例が数多く含まれていること,そして,このような症例においては,数年の観察期間では,その肉眼的な形態と同時に,癌の浸潤の様式もあまり著変をみとめることなく経過すること等が知られるようになった.即ちこの様な肉眼型を呈する胃癌においては,癌の発育進展はあまり早いとはいえないにもかかわらず,一方において,進行胃癌として発見される症例も決して減少して来てはいないことから,最近では早期胃癌と進行胃癌の結びつきについての検索が,関心の的になって来ている.
このようにして,最終的に進行胃癌であった症例における過去の検査資料を検討すると,典型的なBorrmann分類の形として診断された症例では,悪性サイクルをたどるような症例と比較できる程度の期間において,その肉眼形態がおどろく程の変化を呈する症例が含まれていて,これらの症例における癌浸潤の拡大,進展の速度がきわめて早いという印象が持たれる様になって来た.そして,その中でも,Borrmann Ⅳ型胃癌(肉眼的分類としては,Linitis plastica型胃癌,スキルス,とほぼ同義と解釈している)でその印象が最も強いのではなかろうか.我々が集めえた最終的にBorrmann Ⅳ型胃癌の形態を呈した前検査資料を有する症例の中で,前検査資料からある程度の肉眼形態を推測でき,しかも最終的に病理組織所見により確認された症例を中心に,その中の3例を例示しながら幾つかの間題を検討してみたい.
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