診断の手ほどき
急性胃アニサキス症の診断
並木 正義
1
,
諸岡 忠夫
1
,
河内 秀希
1
,
上田 則行
1
,
関谷 千尋
1
,
中川 健一
1
,
古田 豊治
1
,
太黒 崇
2
,
鎌田 等
3
1北海道大学医学部第3内科教室
2太黒病院
3浦河日赤病院
pp.1437-1440
発行日 1970年10月25日
Published Date 1970/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111288
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あまり早期胃癌の症例が続いてもあきがくると思い,今回は趣をかえ,表題のような問題をとりあげてみた.
従来,アニサキス様幼虫が胃壁内に侵入し,特有の好酸球性肉芽腫を形成したものを胃アニサキス症と称してきた.ところがわれわれは,いかの刺身,たらの子,生ずしなど(これらはいずれも生きたアニサキス様幼虫を含むことがよくある)を食べたあと数時間して,いわゆる”食あたり”症状を呈してくるものを,早期にファイバースコープで観察すると,ときにアニサキス幼虫の胃壁内穿入の現場を見出しうることを知った.またこの虫体はレントゲン写真でもうつし出されることが分った.ただこの虫体がアニサキス幼虫であるというには,胃生検用鉗子で虫体をつまみ出し,寄生虫学的に同定する必要がある.このようにしてわれわれは,これまで17例について生きたアニサキス幼虫を発見し,吟味してきた.これらはその急性胃症状とてらして,臨床的に”急性胃アニサキス症”とよんではどうかということを,この春の内視鏡学会総会において提唱した.これについてくわしく述べる余裕もないし,この欄の趣旨も考えて,ここでは注意深く観察すれば,胃内のアニサキス幼虫を内視鏡的にも,またレントゲン的にも見出しうるものであることを述べるにとどめる.まず症例について,その実際をみていただこう.
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