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書評「―人間の医学シリーズ―臨床検査」
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.1263
発行日 1969年10月25日
Published Date 1969/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111004
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実地医家のための会の藤沢正輝氏をはじめとする方がたの書かれた「臨床検査」は,小冊子ではあるが,実地医家の行なう臨床検査のあらゆる問題が盛られている点で貴重な本である.大病院において,臨床検査は情報蒐集という点を残してますます臨床の医師の手から専門の技師の手に移りつつあり,その隔絶から一面に多くのひずみを生みつつある.なぜなら臨床検査はいわゆるベットサイドの医師を離れては不完全なものであるからである.実地医家がある意味では最も生きた臨床検査を行ないうる立場にあることを本書は感じさせてくれる.そして現在ではまだ狭いこの範囲を着実に極めてゆく道も示している.したがって臨床検査に対する認識不足から宝の山に入るのをためらっている実地医家の人にとっては啓蒙の書でもある.
現在の臨床検査を学問的にいかに考えるかということはむずかしい問題であるが,藤沢氏の言葉を借りれば,take off(離陸)の時代としてうけとめられている.この実地医家の会の方がたは臨床検査を早くも日常診療に十二分に活用されているが,それに至るまでの開拓者の苦労も行間に滲んでいる.この点で病院の検査室で臨床検査の発展に努力している私どものような医師にとっても共感を覚えるところが少なくない.私たちの仲間も苦労を共にしている親愛感と,いわゆるミサイル検査といわれる未来学に対する喜びを常々持ち合わせているが,本書の著者らも同じようなものを抱き,これを実地医家の人々にあますところなく分かちたい熱意と親切心が十分に窺える.
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