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書評「急病―人間の医学シリーズ8」
山形 敞一
1
1東北大
pp.1599
発行日 1968年11月25日
Published Date 1968/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110668
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佐藤,吉田,本島の諸博士による“急病”が人間の医学シリーズの第8集として刊行された.小生は勤務医として15年間,救急疾患を診断さ
せられる立場にあったが,勤務医にとって大切な仕事の大部分は急患処理に終始するものであるが,また開業の医師による緊急処置の予後におよぼす影響がはなはだしく,しばしば考えさせられる点が多いが,医学書や雑誌のなかに,これを単独に取り上げたものは少なく,第一線の医師は患者の生命の保持ばかりでなく機能の保全の意味でも独立して,その処置なり方法なりを成書によりふだんから十分に考究しておく必要がある.
救急の場合,専門医の施術以前の問題で主体に加えられたその場での障害の程度と機能の維持のために共通の医師としての立場があり,その処置の順序付けや処置法が考慮からのぞかれたならば後の処置への影響ばかりでなく,あとあとの障害の発現への危険をも内蔵することになる.それゆえ,急患に対しては内科とか外科とか眼科,耳鼻科を問わず,ふだん冷静に考察しておくべき事項であり,他科に依頼する以前の処置を十分かつ細心に考慮しておかねばならない.かつ急患に関する記載は成書によるも簡略に取り扱われ,核心をついていないものが多く,諸種の報告を見るに,むしろ偶然に支配され着実にして自信をもった記録に乏しい.前線の医師が常に困難を感じながらも,これらの技術的なものを成書化する機転にかけている.このような折に多年,各科を専門としておられた諸博士がこれを正面より取り上げ,体質からにじみでる記録をされたことは意義深いことであり,常にその方法に悩まされている医師諸君に一読をすすめたい書である.
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