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高知県における胃疾患研究会が南国土佐の地において初めて開かれたのは,昭和35年であった.当時市民病院長であった山崎求巳先生が初代幹事となって田坂先生並に崎田先生をお迎えして,正式に第1回の胃カメラ研究会がスタートされたわけですが,同好の先生方が県下から集り50名は下らない盛況であった.以来この研究会は胃疾患に関心のある先生方が特に会則というものを設けているわけではありませんが,毎月1回行われるこの会に日常診断に困難である症例や,手術適応かどうかの例,或はレ線診断,内視鏡的所見から手術所見,更に肉眼標本より組織診断までというように一連の系統的な症例を次々に出され,自由にしかも熱心に討論するということがこの会の特長といえましょう.高知市には胃カメラ研究会の他に胃疾患に関するものが2つあり,その1つは徳島大学放射線科河村教授の主催されるレントゲンアーベントであって年に1回位高知で行なわれており,他の1つは高知県予防課が行なっている胃集検読影研究会がある.この読影研究会は月1回行なわれ主として公立病院に在籍の先生が集り,岡山大学小坂内科の草加芳郎講師を中心に間接フィルムより精検に至るレ線的,内視鏡的所見などについて検討が行なわれ,僻地における現地精検などの症例も出され,所謂高知県方式なるものであるが,この研究会は限定された先生方のため少人数で行なわれている.以上の如く高知県の胃疾患に関する研究会は3つに分れていると思われるが,症例を出来るだけたくさんの先生に検討して頂くという点で重複する場合も屢々見受けられるけれども胃集検の症例も出来るだけ胃カメラ研究会に出して頂くようにしている.そういう点において胃カメラ研究会は一番症例数も多く,毎月の例会は非常に盛会でしかも層が厚く,来られる先生方は同好の士とはいえ非常に熱心な討論が繰り返えされている.また目常診療に多忙のため中央の学会にもなかなか出難い先生方も居られ,更に高知県の研究会のレベルアップの意味もあり,例会には度々各分野のエキスパートの先生にお願いして講演会或は実技の講習などをうけております.昭和39年には国立がんセンターより市川先生,山田先生が来られ早期胃癌のレ線像について講演され,特に二重造影法についての詳細な説明があり,その後の症例検討会にも積極的な意見が会員との間に交換されレ線写真撮影上の技術的な問題にまで触れ初期癌の診断は二重造影法により充分診断し得るという確信を諸先生が改めてもたれたわけです.昭和42年には大阪回生病院青山大三先生を例会にお招きして極く初歩的なことから,X線写真読影上の注意点,更に最近の胃疾患についてのお話を聴き胃レ線検査能力向上に一段と拍車をかけて下さったわけです.昭和41年には実技の講習が行なわれた.即ち例会の翌日市民病院においては信田重光先生の洗滌法による直視下細胞診が行なわれ,県立中央病院においては竹本忠良先生によるファイバーガストロスコープによる直視下生検法の実際が患者3名について行なわれて百聞は一見に如かずで,細い注意点などは実施中に指摘され,又会員にもやらせて貰ったため現在もそれを基にしてどしどし細胞診,生検が行なわれている.このように例会には白壁先生,村上先生など御出席を願って年に4回位の講演会を行なっているが,官公立病院,開業医と広く支持層を得て存在意義を大きくしている.それだけに幹事の役割も又非常に重くこの会の発展のため努力しております.
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