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これまで5回にわたって主として小腸X線検査の方法について述べた.繰り返しになるが,これらの種々の方法に共通して,しかも最も大事なことは,できるだけ充盈した腸索を,分離して観察し描出することである.そして,その基本となるのは経口法で,術者は圧迫を加えながら腸索を分離し,観察している部位が小腸のどこなのか,経時的に腸管のほぼ全体を観察できたかどうかを考えながら,大まかに何枚かの写真の上にそれを表現しておく習慣が欲しい.
胃や大腸の場合と異なって,小腸のX線検査では二重造影像を撮影しておけば誰かが読影してくれるという面は少ない.すなわち,二重造影法やHerlinger法は検査技術に左右されることが多く,経口法による検査に習熟した人が行って初めて診断に役立つ検査となることを認識して欲しい.その典型例として,Fig. 1に最近経験したいわゆる“非特異性多発性小腸潰瘍症”の1例を示した.Fig. 1は他院での以前のX線検査フィルムを借用したものであるが,経口法で異常が指摘されながら二重造影法で異常なしとされ,そのまま放置され診断されていない.この症例は最終的には当院で手術されたが,術後造影像と対比してみると,その特徴は経口法の不十分な写真上でも十分に読影可能である.この症例から学ぶべき点は,①ゾンデ法による二重造影法は,二重造影撮影のためだけに行うのではなく,空気注入前のバリウム注入時にも圧迫を加えつつ観察し必要に応じて写真を撮影しておかねばならない,②下手な二重造影はむしろ行わないほうがよい,③自信がない場合は専門家にconsultationすべきで,いい加減な妥協と診断はかえってその人の上達を阻害する,といったことであろう.
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