今月の主題 前癌病変としての胃潰瘍とポリープの意義
胃潰瘍の部
前癌病変としての胃潰瘍
常岡 健二
1
1日本医科大学第三内科
pp.695-696
発行日 1968年6月1日
Published Date 1968/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110806
- 有料閲覧
- 文献概要
臨床の方の立場から胃潰瘍から癌になるという問題に対して簡単に結論をいうと,なるといえばなる,ならないといえばならない,ということになるかと思う.ということは先程の病理の方のお話,あるいは臨床側の只今のお二人のデーターを見てもその観察期間が短いと,たとえば最初に胃潰瘍と診断した,それから次に胃癌と決定した場合,先行の胃潰瘍と診断されておったものが果して良性であったかどうかということに非常に疑問が残る.私共の経験では,結果的には早期癌,しかも癌浸潤が粘膜内に限局しているようなものでも,1年半~2年位は,ほとんど同じ状態を観察し得た例もある.数年後に進行胃癌の形で診断されるということになった場合,その初めの診断が良性潰瘍と診断されても,それが必ずしも良性であるという根拠にはならない.したがって経過年数の検討ということを十分にしなければならない.われわれ臨床家が出す潰瘍から癌になる頻度というものは,病理の方がいろいろくわしく検索をされて出されるデーターに答えるほど忠実なものではない.
また良性潰瘍の診断は,最近では細胞診,生検を行なうため,それだけの自信をもっているが,そういう患者を今後5年,10年と経過観察ができるかという問題がある.
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.