今月の主題 前癌病変としての胃潰瘍とポリープの意義
胃潰瘍の部
前癌病変としての胃潰瘍の意義―臨床的立場から
和田 武雄
1
,
佐藤 勝巳
1
1札幌医科大学和田内科
pp.691-693
発行日 1968年6月1日
Published Date 1968/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110805
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和田 私共の所では,大体1955年から1963年までの9年間,現在のような生検までを行なわない形でfollow-upしてきた.それから1964年以後は胃液の分泌機能との関係,いわゆる癌の生物学的診断法との関係を含めて,内視鏡的な検索と生検診断を実施している.この点からデータを二つに分けるが,最近これを佐藤が集計したのでスライドについて説明させる.
佐藤 Table 1に一括してあるが,観察例は1965年から本年8月までの12年8カ月間のもので,総計193例である.いわゆる遷延性の慢性潰瘍であるが,手術等の関係もあって,実際上は1年未満の例が119例を占めている.1年以上3年未満の例は34例,3年以上5年までが19例,5年以上10年未満の例は21例である.前半の1963年までの129例では潰瘍癌は6例である.これは遷延性胃潰瘍129例に対しては4.6%であるが,全部が手術によって確かめられていないから,手術した70例に対しては8.5%になる.これらはすべて1年以上潰瘍病変が継続したか,ないしは再発を繰り返した例である.3年未満32例の中では3例,5年未満17例の中では1例,5年以上10年未満の21例中では2例の潰瘍癌が見出されている.
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