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1.歴史的な経緯と本稿における基本方針
これまでに前立腺癌の前癌病変として可能性を論じられた病変は,前立腺上皮内腫瘍(prostatic intraepithelial neoplasia;PIN),腺症(adenosis)ないし異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia;AAH),異型小型腺房増殖(atypical small acinar proliferation;ASAP)などがあり,それぞれに,過去に用いられたり現在も通用する同義語が存在する(表).研究の進展に伴い,現在では高度前立腺上皮内腫瘍(high-grade prostatic intraepithelial neoplasia;HGPIN)のみを前立腺癌の前癌病変とみなす傾向にある.WHOもその立場をとっており,2002年のWHO分類,いわゆるblue bookでは,軽度前立腺上皮内腫瘍(low-grade intraepithelial neoplasia;LGPIN)をatypical hyperplasiaと改称して前癌病変から除外し,HGPINを単にPINと呼んで,病理組織診断に記載すべき唯一の前癌病変と定義した1).この立場はWHO規約の最新版である2004年の“Pathology & Genetics”にも,基本的に踏襲されている2).一方ASAPは,前癌病変とは必ずしもいえないが,前立腺癌のリスク増大因子としての意義はHGPINと同様に高く3),病理組織学的あるいは臨床的に重要である.
本稿ではHGPINについて主に述べ,ほかの病変についてはHGPINと比較検討しながら適宜解説する
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