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書評「胃の拡大内視鏡診断」
山部 茜子
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1福島県立医科大学会津医療センター準備室・消化器内科
pp.1290
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113918
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私が胃拡大内視鏡を学び始めたころ,異常粘膜をみた際に“何となく変だ”というのはわかっても,どうして変なのか,なぜそういった像になるのかということは全くわからなかった.理詰めではなく,こういうものなのだと納得していくしかないのかと諦めかけていた矢先に出合ったのが本書である.拡大内視鏡に関しての参考書はいくつかあるが,拡大内視鏡所見をここまで詳しく論理的に説明している本はないと思う.
本書の特徴は,何をおいても各症例の拡大内視鏡所見と病理所見の一対一の対比検討であろう.局所的,表面的観察にとどまりがちな内視鏡所見を,病理所見と細かく対比・検討し,著者らの正確で豊富な知識に基づいた説明が加えられている.平面である内視鏡所見と,病理所見を対比することで3次元的構造をイメージしながら勉強することができ,新たな世界が広がってくる.まさに目からうろこである.本書の流れとしては,まずは基本となる正常粘膜の拡大内視鏡像の説明から始まり,次に慢性胃炎,分化型早期胃癌,未分化型早期胃癌と順序立っており,最終的には拡大内視鏡観察時の胃癌診断のフローチャートが示されている.必要な場所には親切な解説やシェーマ,細かい用語解説が添えられ,これから拡大内視鏡を始める人,あるいは初心者にとっても極めてわかりやすい内容となっている.写真や実際の症例を多数掲載することによって,系統立った理解に加えて視覚的な理解も十分得られる.また,拡大内視鏡の他にも,胃内視鏡診断学において重要な酢酸併用法の解説もされており,酢酸撒布で観察される立体的な像を加えることでさらに理解を深めることができる.
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