東京臨床細胞診研究会
胃細胞診について
城所 仂
1
,
相馬 智
1
,
瀬戸 律治
1
,
城島 嘉昭
1
,
後藤 一博
1
,
谷合 明
1
,
山川 達郎
1
,
広瀬 淳一郎
1
,
片柳 照雄
1
1東京大学分院外科
pp.275-276
発行日 1968年3月25日
Published Date 1968/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110680
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細胞学的診断法は,婦人科領域にはじまり,ついで肺,胃,胸腹水,口腔,尿路,結腸等あらゆる分野に用いられるようになり,しかもリンパ系或は血液中の腫瘍細胞の検索もその対象となってきた,このように細胞診の領域が拡大すると同時に,各部門における標本採取手技及び細胞像の詳細な研究,即ち各論的な内容が深められており,近い将来,学問的体系を備えた臨床細胞学として確立されるものと期待しえよう.
胃における細胞診は,近年開発されたファイバースコープ使用による直視下採取法により,その診断成績は著しく向上した.その採取手技(洗滌,吸引,生検塗抹等)や,スコープの改良が尚必要であろうが,直視下法自体は,将来の方向として正鵠を得ているものと思われる.今後の問題は,良悪性に関していかに正確な診断を下すかということである.この点で細胞学的診断と生検組織の病理学的診断の優劣が問題になろうが,臨床家として公平にみて,細胞診には少数の細胞で診断を下しうる利点があり,且教室においては,個々の症例においては,生検組織診と比較して大差ない秀れた診断率を挙げている.しかもたがいに相補うものがある.したがって判定の難しい標本では,両者がたすけあって,より正確な診断を下すことが可能になると考えている.特に最近の如く,早期胃癌と異型上皮の鑑別が問題になる場合,組織診に加うるに,細胞異型に重点をおく細胞診による判定を併せ診断していただきたいと思う.
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