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普通,医学雑誌に投稿依頼されると,必ず所属氏名を書かされるようである.気管食道科の医師が,X線テレビ診断と装置の趨勢という技術解説を2回にわたって執筆するというと,一体どういう解説ができ上るか極めて不安に感ずる方も多いと思われる.しかし気管食道科という耳鼻科か,外科かわからない科に何となく医長という肩書の元におしこめられたのは,元々機械と医用映画と医用テレビの好きな医師が仕方なく肩書におさまったと考えていただきたい.しかしそうかといって,私は「胃と腸」という消化器専門の雑誌に書くいわれはまったく存在しない.というのは私は医師になってから十数年間,胸部疾患ばかり取り組んできた外科医であり,その後放射線科医となり,現在の名目の気管食道科医となっているのである.しからばこの医師が何でこのような表題と取り組み,また何故このような科を遍歴したかというと,前にも述べたように,元々ちょっとばかり機械に強かったことに他ならない.といっても機械工学を専門にやったこともないし,電子工学も生かじりである.いうならばちょっとばかり好きであることと,一たびはじめると故障さすまで承知しない性質があったからに他ならない.
このように技術解説というテーマでありながら,私ごとのつまらないことをくどくど述べたのには,ちょっと理由がある.技術というものは職人の話である.職人というのは同じことを何回も繰り返し反覆して,少なくとも自分の頭ではわかったような顔をしており,さらに原理的に単純下して理解してしまうものではないだろうか.少なくともある程度の基本的な技術をマスターし,これを反覆修錬しているうちに,自分も職人となったつもりになるものである.これは機械の単純化原理を基礎的に知ることになるのではないだろうか.
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