綜説
アイソトープの利用の趨勢
森 栄幸
1
1科学技術庁原子力局アイソトープ課
pp.689-697
発行日 1959年11月15日
Published Date 1959/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202208
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I.はじめに
本誌8月号に原子力関係の論文が掲載されたがこれは原子力と公衆衛生の両者の結びつきの重要性に着目されての企画と考えられる。アイソトープの利用を見ても,公衆衛生という面から,いろいろと問題が浮び上つてくる。まず,アイソトープが使用される目的によつては,一般公衆へ危害の及ぶ恐れのある方法で使用される場合のあること,つぎに,各所の研究室工場などで使用ののち廃棄されるアイソトープのこと,また,アイソトープの使用施設で事故があつた場合のことなど,さまざまなケースが思い出される。
たとえば,アイソトープが広い範囲の野外実験に使用されることがある。詳しくはのちに述べるが,海洋漂砂の移動状況の調査のため放射性の砂をアイソトープで作り,これを海岸線に撤いたり,発電用ダムや農業用水池堰提の漏水調査のためアイソトープを含んだ水を流したり,昆虫の移動飛しよう範囲の調査のため昆虫にアイソトープをラベルして放つ場合もある。これらは,アイソトープの使用前に,附近人口の分布はどうか,飲用水への混入はないか,その地域に放射能が沈着しないか,等々一般公衆に危害を与えないよう慎重な調査が必要なことはいうまでもない。
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