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Flederic Salmonが1835年にSt. Mark病院を開院してから今年は150年目になる.これを記念して5月末にロンドンで盛大な学会が2日半にわたって催され,45か国から1,200人余のcoloproctologistが参加した.さながら,世界の専門家が一堂に会した感があり,わが国からも20人余のセント・マーク・ファンが参加した.学会のテーマはFrontiers in Colorectal Disease,古式豊かな色とりどりのガウンをまとったSt. Mark病院のスタッフが壇上に並ぶ前で,会長のMorsonにより開会が告げられた.この辺がいかにもイギリス流である.この後,Lindsay Granshawという若い女性によるSt. Mark病院の歴史についての素晴らしい講演があった,内容,ユーモア,そして正調の美しい英語(これは当たり前?)はさすが英国と感心させられたが,しばし鳴り止まぬ満場の拍手はこれを証明するものであった.その内容はいずれ近日中に出版される予定になっているが,是非読みたいと思っている.
さて,学会のほうは,Symposium,Seminars on Patient Care,Free Paper,Posterに分かれており,午前,午後30分ずつのcoffee break,45分のlunch時間がとってある.Posterの発表者はcoffee breakの間,自分のポスターの所に立って質問を受け,ポスターは2日半の間,展示したままにしておく.Free Paper(15分)68題,Poster43題はいずれも10人のレフリーによって厳選されたものだけあって,内容は高かった.Symposiumの内容は①Functional Disorders,②Neoplastic Disease,③Inflammatory Bowel Diseaseに分けられ,それぞれ①The Basis of Functional Intestinal Symptoms,Constipation,Anorectal Incontinence,②Adenoma Surveillance,Adenomatous Polyposis,Carcinogenesis,Tumor Markers,Staging,Local Excision for Colorectal Cancer,Radiotherapy,Screening,③Ulcerative Colitis-Sphincter-saving Operation,Ulcerative Colitis-Dysplasia and Cancer Risk,Crohn's Disease‐Special Problems Ⅰ,Ⅱとなっており,この各項目ごとに3~4の講演(15分)と討論時間が組まれており,まことに盛り沢山で密度の濃いものである.Seminarも各1時間,講師の講演と参加者との質疑応答が,ベテランの司会者によってスムースにさばかれてゆく.Clinical Significance of Epithelial Dysplasia in Chronic Ulcerative Colitisなどは是非もっと多くの日本の専門家に聴いてもらいたかった.Colonoscopy,Physiological Investigations of the Colon and Pelvic Floor,The Management of Functional Bowel Disorders and Uncomplicated Diverticular Disease,Towards a Better Stoma等々,興味深い内容のものばかりであるが,とても全部を聴くことはできず残念であった.内容を一々紹介するゆとりはないが,機能面についての話に耳新しいものが多かった.Symposium,Seminarとも,ほとんどがSt. ark病院のスタッフまたはその息のかかったイギリスの医師達によって構成され,それにアメリカ,西欧各国の専門家が参加するという形で進められた.アジアからは筆者がAdenoma Surveillanceのシンポにdiscusserとして参加しただけである.普通の国際学会と異なり,国際交流より討論の内容に重点が置かれた分だけ充実した学会であり,国際学会として大成功であったと思う.
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