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書評「膵疾患図譜」
武内 俊彦
1
1名古屋市立大学
pp.48
発行日 1980年1月25日
Published Date 1980/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106666
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膵炎の診断は,Gulekeの有名な言葉にもあるように,「膵炎の存在の可能性に考えおよぶ」ことから始まるといわれてきたが,ひと昔前までは膵疾患の診断に際して,膵管自体の形態学的変化をみる検査はなかった.胃ファイバースコープを幽門輪をこえて十二指腸球部に挿入した竹本らの経験例の報告を契機として1969年に著者の一人である大井至氏,それと相前後して高木国夫氏によってファイバースコープによる膵管造影が発表され,はや10年が経過した.その間,器種の改良,cannulation技術の向上に伴って内視鏡的膵・胆管造影は同領域の病変の診断上不可欠の検査となり,現在わが国においては多くの施設で積極的に行われている.最近では外国より本法に関する著書も逆輸入されているが,EPCGがたとえERCPにかえられたとしても本邦での独創性は少しもゆらぐものではない.この度,「膵疾患図譜一膵管異常よりみた鑑別診断」が上梓されたことは時宜をえたものとして喜びにたえない.
周知の如く,本書の著者である大井,小越の両氏は本邦において当初より内視鏡的膵・胆管造影の発展に尽力され,既に本法の実際についての著書もだされている.また,多数の膵疾患を経験され,本書に掲載されている症例はすべて貴重な症例といえる.今日,膵管造影像に関しては多くの症例が集積され,本法による診断の限界も明らかにされつつあるが,本書は現時点での膵疾患診断上の問題点,限界を症例を中心として教えてくれる好著である.
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