今月の主題 大腸sm癌
主題症例をみて
病理組織所見と腸切除の適応
中村 恭一
1
1筑波大学基礎医学系病理
pp.859
発行日 1983年8月25日
Published Date 1983/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109443
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大腸ポリープの治療として,最近,ポリペクトミーが盛んに行われている.言うまでもなく,ポリペクトミーは大腸部分切除に比べれば外科的侵襲と患者の負担が少なく患者にとっては好ましい治療法であるが,ポリープが粘膜下組織へ浸潤している癌であってその粘膜下組織における癌の量が少なく,そしてポリペクトミー断端に癌がない場合に,ポリペクトミーに引き続いてすぐに腸の部分切除を行うかどうかが問題となる.アンケート調査からⅠp,Ⅰsp,Ⅰsに対する治療法をみると,A:B:C群は約1:1:2である.A群,つまりポリペクトミー後に経過観察の行われた例が,種々の理由で手術のできなかった例が含まれているにしても,意外に多いように感じた.
ポリペクトミー断端に癌がなく,その粘膜下組織における癌の量が少ない場合は,統計的に癌の取り残しの確率が,そして所属リンパ節転移の率が極めて低い.しかし,そのポリペクトミーによって癌が完全に除去されたという保証はないし,その確率は患者にとっては実感的に高いものである.ポリペクトミーによって粘膜下組織へ浸潤している癌であることがわかった場合,どのような病理組織所見のときに経過観察をせずに腸の部分切除を行うべきであろうか?
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