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従来,消化管の細胞診といえば,主として胃細胞診をさし,鼻管カテーテルを用いるキモトリプシン洗浄法は筆者が勤務したシカゴ大学消化器科細胞診室で,Rubinらがはじめ,日本では,山田の基礎実験以後盛んになった.1958年Hirschowitzが,胃十二指腸ファイバースコープを開発して後,筆者らは,内視鏡の直視下で細胞を剥離させようと考え,1964年,Hirschowitzのファイバースコープの外部に,鼻管カテーテルを装着し,病巣に洗浄液が当るよう工夫した.同じ頃,癌研の高木は,同様な方法で直視下胃生検を始めた.その後内視鏡メーカーの努力で,細胞診専用のファイバースコープが生まれ診断率の著明な向上をみた.当初は,細胞診断率が生検診断率を上廻っていたが,生検技術の進歩で,最近は後者が前者を上廻るようになった.1964年から1969年に到る,愛知がんセンターでの胃直視下洗浄細胞診の成績は131例の早期癌で,1回検査で82.55%,生検では,151例の早期癌の1回検査で,94%と後者が前者を約12%上廻った.癌診断は,組織レベルで行う方が,細胞診レベルで行なうより遙かに信頼性がある.従って,生検が容易な症例での細胞診の診断上の意義は少ない.それに直視下洗浄法は,通常細胞診用ファイバースコープを用いるので,生検と別の日時に行なわれる.従って,患者側の経済的,身体的負担が大きくなる.
そこで筆者らは,消化管内の内視鏡検査可能な部位での悪性腫瘍の診断は,先ず生検を直視下に首尾よく行なうこと,細胞診は補助的に用いることにしている.従って,生検が陽性なら,細胞診は不要で,生検が偽陽性で細胞診が癌細胞を証明したときこそ,その真価が発揮されると考える.
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