Laboratory Practice 〈病理〉
尿細胞診におけるvimentin陽性細胞
大﨑 博之
1
1神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域
pp.927-931
発行日 2019年8月1日
Published Date 2019/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207658
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はじめに
尿細胞診は,腎盂・尿管・膀胱の粘膜上皮に発生する腫瘍の発見,すなわち尿中の癌細胞の検出を主目的としている.一方で,尿細管上皮細胞など腎実質由来の細胞は,その形態や意義に関する知見に乏しかったこともあり,尿細胞診において軽視されてきた.
筆者らは約20年前から,尿細胞診標本に出現する尿細管上皮細胞の細胞学的特徴の検討を行ってきた1).その過程で,糸球体腎炎などの患者の尿中に再生異型を伴う尿細管上皮細胞(反応性尿細管上皮細胞)が出現すること,その形態が癌細胞に類似するため誤陽性の原因となっていることを見い出した2)(図1).さらに,その後の検討で,反応性尿細管上皮細胞と尿路上皮癌細胞の形態学的・免疫細胞化学的な鑑別点を解明してきた3〜9).特に免疫細胞化学において,反応性尿細管上皮細胞がvimentin陽性を示すことを発見し,vimentin陰性の尿路上皮癌細胞との鑑別に極めて有用であることを明らかにした3,4,7).
近年,学会などにおいて反応性尿細管上皮細胞とvimentinの反応性について発表されることも多くなり,その認識の広がりを実感している.しかし一方で,“vimentinは尿細管上皮細胞のマーカーである”などの誤解も生じている.本稿では,尿中に出現する各種上皮細胞と尿路上皮癌細胞におけるvimentinの反応性について解説する.
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