胃と腸ノート
大腸クローン氏病(Crohn's colitis, Granulomatous colitis)
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.790
発行日 1973年6月25日
Published Date 1973/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108540
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従来日本人には,胃疾患が多く,下部消化管疾患は非常に少なかった.十数年前の著者の学生時代にさかのぼると,大学の講義で,大腸疾患についてあまり聞いた覚えがない.潰瘍性大腸炎の患者をはじめてみたのが,入局して3年目であり,消化器中心の著者の所属していた内科でさえも,この診断名のつくのが年に1~2例だった.1960年,Lockhart-Mummeryらの記載する大腸のクローン氏病一のちにLindnerがGranulomatous colitisと命名一は,全く耳にすることさえない疾患だった.だいいち,本家本元のRegional enteritis(クローン氏病)をみたことがないのだから,当り前である.
ところが,卒業後7年目に機会を得て,シカゴ大学のDr. Kirsnerのもとへ行ってみると,GIカンファランスで,毎週のごとく,Ulcerative colitisかRegional enteritisの症例のDiscussionが行なわれ,ある所にはあるものだと痛感した,これらの疾患に十分お目にかかって帰国してみると,日本はやはり大腸疾患,ことに非特異性慢性炎症の砂漠地帯であるのを再認識せざるをえない.
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