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indeterminate colitisとは,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)とCrohn病(Crohn's disease;CD)の鑑別困難例である.CDとUC両疾患は,特異的な診断項目がなく,主に形態学的所見(びまん性罹患vs. skip lesion,縦走潰瘍,敷石像,広範なアフタ,小腸病変,肛門病変,上部消化管病変,狭窄,膿瘍など)や組織学的所見(粘膜主体の炎症,transmural inflammation,不釣合い炎症,patchy inflammation,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,など)によって診断される.しかも,両者の鑑別点は従来からあいまいな点が存在することが知られていた.
indeterminate colitisは,当初は手術例の切除標本の組織学的検索によっても鑑別できない場合を指した1).その多くは,激しい潰瘍の存在によりUCあるいはCD特徴的な所見が得られないものが多かった.現在では,その概念が徐々に変化し,切除例のみならず,内視鏡所見や生検組織所見などの臨床的項目で鑑別できない場合も含まれるようになった2).すなわち,後にCDと確定するものでも当初はびまん性大腸炎を呈することがある(Fig. 1, 2).逆に,限局性大腸炎であってもUCの病態を呈することがある(直腸罹患を欠く例の存在,区域性大腸炎,右側大腸炎の存在).内視鏡診断のみでは確定できないことがある点,治療選択に際し臨床医が留意すべきである.さらに生検組織診断を加えても正診できないこともある(CDにおける生検での肉芽腫検出率は30~40%程度).小児のIBD(inflammatory bowel disease)ではIBDが発症早期であるため特徴的な像が乏しく確定診断ができないことが多いとされている.しかし,慎重に経過追跡することにより多くは確定診断に至るとも考えられている.わが国のCDの診断基準にも「indeterminate colitisはCrohn病と潰瘍性大腸炎の両疾患の臨床的,病理学的特徴を合わせもつ,鑑別困難例」と付記されている3).
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