胃と腸ノート
大腸癌のStaging
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.626
発行日 1973年5月25日
Published Date 1973/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108480
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大腸癌の形態は,胃癌のそれ程多彩ではない.隆起型と潰瘍型が多く,硬性癌は非常にまれである.中でも,Borrmann Ⅱ型に類似した潰瘍限局型が圧倒的に多い.大腸は胃に比べると粘液分泌以外の複雑な分泌能をもたず,従って組織もきわめて単純な粘液分泌腺からなる.そこで癌の組織型は,良く分化した形態をとり,胃でいうなら分化型(乳頭状腺管腺癌)の形をとるBorrmann ⅠおよびⅡ型類似型が多くなる.胃と同様に隆起型は,比較的早期で予後のよいものと考えられる.大腸癌の発見は,狭窄による排便障害や,表層組織の破壊による出血等がきっかけとなるので,潰瘍形成のBorrmann Ⅱ型が多く,さらに浸潤様所見を呈すれば,Ⅲ型を示すものも少なからず存在する.胃のスキルスに相当する型は大腸組織を母地としては発生しにくい.数少ない報告があるのみだ.早期発見といえば,ほとんど隆起型で,ポリープかポリポイド癌の鑑別を要する症例として発見されることが多い.胃の早期癌のⅠ型,Ⅱa型の形態で発見される.ⅡcとかⅡc+Ⅲのごとき陥凹型の早期発見例は経験がない.
大腸癌の予後に関連するStage分類として有名なのは,1932年のDukesの分類である.彼は直腸癌に関し次の3つのTypeに分けている.Type Aはリンパ節転移のない直腸壁に限局したもの.Type Bは,リンパ節転移はないが,癌が腸壁を貫いて近接臓器に達している.Type Cは腸壁を貫いて,リンパ節転移を認めるもの,等がある.Gilbertsenらによれば,大腸癌切除例のDukes分類による5年生存率は,Aで75.5%,Bで59%,Cで33%だったと述べている.
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