今月の主題 胃癌の経過
主題
病理からみた隆起性胃癌の進展について
佐野 量造
1
1国立がんセンター,病理部
pp.585-588
発行日 1973年5月25日
Published Date 1973/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108472
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今回,寄せられた経過追跡資料の大部分(12例中10例)は,消化性潰瘍を合併しないいわゆる隆起性胃癌であったので臨床資料を参考とした病理からみた隆起性胃癌の進展と発育についての私見をのべてみることにする.
臨床資料よりみた隆起性胃癌の成り立ち
良性ポリープまたは異型上皮等の非癌性病変を母地としたものを除き大部分の隆起性癌は平坦な癌(Ⅱb)より発育したものと考えられる.図1に示すように潰瘍を合併しないⅡb型の癌はその進展に2つの方向があり,1つは隆起して(Ⅱa)胃内腔に隆起癌となるものと,他の1つは陥凹してⅡc型(びらん癌)となり,更にこのびらん癌は粘膜下層以下に浸潤してⅡa+Ⅱc型(深部浸潤型),更に進行するとボルマンⅡ型癌になる.以前の成書ではボルマンⅡ型癌はボルマンⅠ型よりの決潰によって生じたものとのみ考えられてきたがⅡb→Ⅱc→深部浸潤型(Ⅱa+Ⅱc)→ボルマンⅡ型に至る過程を筆者らは数回にわたりのべてきた.今回の集められた資料における初回の臨床所見を大別すると2つに分けることができる.
①Ⅱb(またはⅡc),または正常粘膜
②Ⅱa様隆起(ポリープ及び異型上皮を含める).
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