胃と腸ノート
色素撒布法を応用した十二指腸球部粘膜の微細観察(1)―観察方法およびほぼ正常な絨毛像について
中島 正継
1
,
川井 啓市
1
1京都府立医科大学第3内科
pp.1624
発行日 1973年12月25日
Published Date 1973/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108413
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胃内視鏡検査における色素撒布法の応用の意義については,すでにわれわれがたびたび報告しているように,病変部の詳細な観察や粘膜の微細観察にきわめて有効である.同様の色素効果は十二指腸内視鏡検査においても期待されたが,実際に275例397回の十二指腸球部への色素撒布においても90%以上に満足すべき効果を認めた.
現在われわれの行なっている十二指腸球部への色素撒布方法は,通常どおりの観察後いったんscopeを胃内にもどし,附属のテフロン管を幽門輪近くまで出して経幽門輪的に色素液を撒布する方法である.色素液は0.2%のインジゴカルミンまたはメチレンブルーで,撒布量は15~20mlの大量を用いている.もちろん1~2mlの少量を直接目的病変に撒布しても,その部位の微細観察には充分であるが,時に撒布が不均等になったり,色素液が十二指腸液と混じて像がまだらになったりすることがある.大量撒布法はこのような欠点を防ぎ,病変部のみならずほぼ球部全体の微細観察を可能にする.もっとも,この方法では色素液が球部小轡側(左側臥位にて)に溜まることがあるので,その部位の観察には適時体位変換や過剰色素液の吸引を要する.なお,腸上皮や腸化生上皮はメチレンブルーに対して染色性を有するので,メチレンブルー液撒布後は時間の経過とともに絨毛が染まってくる.したがって,メチレンブルー液を使用した時には,染色絨毛の観察を目的とする場合を除き,できるだけ素早く観察する必要がある.
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