胃と腸ノート
色素撒布法―1.前処置法について
井田 和徳
1
,
川井 啓市
1
1京都府立医科大学第3内科
pp.466
発行日 1973年4月25日
Published Date 1973/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108431
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色素撤布法とは
本法は1967年津田が初めて報告したもので,赤色調を呈する胃粘膜に対称的な色調となる青色系の色素を撤布して,微細な凹面に色素が溜まることによって微細な凹凸を明瞭化しようとするものである.われわれが色素撤布法を始めたのは,類似Ⅱb症例の検討の際病巣表面の微細顆粒の異常を切除標本では指摘できても,術前の内視鏡像ではほとんど指摘できず,内視鏡検査における一層の精度の向上を痛感したことが動機になった.
津田らは生検用ファイバースコープの鉗子孔から挿入したカテーテルを通して,無処置のまま直接胃粘膜に色素液を撤布している.確かに無処置のままでもかなり鮮明な微細凹凸像が得られることもあるが,周知のように胃粘膜面はいわゆるmucous barrierとしての役割を果たしている粘液で一面が覆われているもので,その表面に色素液を撤布しても必ずしも,胃粘膜自身の微細凹凸をそのまま表現するとは限らない.かえって粘液が色素液で染色され,観察を困難にすることも稀でない.本法が現在まであまり普及しなかった原因もこのあたりにあるように思われる.
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