胃と腸ノート
潰瘍性直腸炎
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.1600
発行日 1973年12月25日
Published Date 1973/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108409
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30歳女子.主訴は1カ月間にわたる時折の血便排出で来院.大腸X線透視では異常なしなので,多分痔疾患による出血といわれ放置しておいた.約1年後再び同様な症状が続き,下痢もあるので気になって来院,大腸X線検査を受けた.放射線科の診断では異常なしだったが,筆者がみると,写真のごとく,直腸膨大部に限局してトゲ(Spicula)を認め,潰瘍性直腸炎(Ulcerative proctitis)を疑った.大腸ファイバースコープ検査では,肛門より15cmくらいまでに出血性びらんと顆粒状粘膜を認め,潰瘍性直腸炎と診断.生検組織は炎症像を示していた.サラゾピリン3g投与を開始し,20日後には出血,下痢とも消失した.以後経過観察しているが,経過は良好である.
代表的1例を挙げたが,直腸に限局したこのような炎症にはしばしば遭遇する.昭和45年から48年5月までに筆者が扱った非特異性慢性大腸炎症38例で,潰瘍性大腸炎11例,大腸クローン氏病(Granulomatous colitis)5例,残りの22例に潰瘍性直腸炎の診断をしている.
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