Japanese
English
今月の主題 消化管の健診を考える
序説
「消化管の健診を考える」特集に当って
An Outlook for a Thorough Check-up of the Whole Digestive Tract
市川 平三郎
1
H. Ichikawa
1
1国立がんセンター病院
pp.1317
発行日 1979年10月25日
Published Date 1979/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107777
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- Abstract 文献概要
綿密な透視をしながら,圧迫撮影と微妙な粘膜撮影を行わなければ,胃の診断はできないと信じていた頃は,「充盈像ばかりで,しかも間接撮影を行っただけで,どうして治癒可能な胃癌を早期に発見できるものか」と批判された時代があった.しかし,これらの杞憂は,充盈像に表われる微細な所見の解析とか,変形学の進歩によって,意外に正確にわかるということが明らかとなり,更には,二重造影法が普及したことによって,みごとに克服されたといえるであろう.
つまり,「早期診断」の技術が完成して診断が可能になったからといって,すぐさま,その方法で,不特定多数の無症状群の中から癌を拾い出すのに成功するとは限らないということなのである.例えば,直径1cmの小さな膵臓癌が,血管造影で診断できるようになったといっても,1日50人から100人もの一見正常に見える人達に,すべて血管造影を施行するわけにも行くまい.言い換えれば,「診断」できるからといって,「発見」できるとは必ずしも言えないということなのである.一次的な発見方法が容易に,しかも正確度が高く,費用と手間と発見率との相関で計算しうる効率が,許容範囲ということになれば,「集団検診」という作業が容認される.集団としては容認できても,個人としては,その正確度が不満で,少し高い費用もいとわぬ向きには,「集検」でなくとも,最初から精密検査を行うような「検診」であってもよいわけである.
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