胃と腸ノート
Ⅱc+Ⅱa型早期胃癌の臨床診断(5)
倉俣 英夫
1
1神奈川県立成人病センター
pp.620
発行日 1976年5月25日
Published Date 1976/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107241
- 有料閲覧
- 文献概要
S. K. 57歳 男
レ線所見:立位充盈像では特に異常と思われる所見はない,しかしFig. 1,2二重造影像では幽門前庭部後壁に明瞭な粘膜ひだ集中像を見る.集中点はほぼ一点で,ことに大彎側から集まるひだが幅広く肥大して見える.集中ひだ先端の蚕蝕様所見ははっきりしないが,中心の潰瘍をとりまいて周囲にⅡcの輪廓を思わせるごく浅いバリウムの溜りが読める.このⅡc様陥凹の小彎側から幽門側にかけて広い範囲で大小不整,結節様の隆起が集簇して見える.その一部の粘膜面からの立ち上りは明瞭であるが,胃壁の過伸展では不鮮明となる.比較的柔かい感じをうけるところもあるが,診断は広いⅡc+Ⅲ,進行型の癌を疑った.
内視鏡所見:レ線像の如く胃角後壁に粘膜ひだ集中所見があり,中心部はビランを有している.その周辺に褪色のはっきりした大小不整の隆起がとりまいて,ことに大彎側から集まるひだが太く肥大し,やや突張ってみえる,前庭部には点状出血が散在している.内視鏡的にはまずリンパ腫,次には進行癌を疑った.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.