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最近話題になっているPO(problem-oriented問題志向型)形式の診断書は,現在示されている問題への診断的アプローチを教えることにより,従来の疾患記述中心の教科書と実地臨床場面における診断とのギャップの橋渡し的役割を持っている.しかしこのPO形式のテキストは在来のテキストを補充するものであっても代用するものではない.postgraduateの教育に際して患者の提出する問題,すなわち症候や所見,異常な検査データから入って診断に至るPO形式の実用性と,個々の疾患についての詳細な記述からなる従来のテキストの系統性と,この両者をかみ合せたものが欲しいと願うのは私だけではあるまい.今回本書を読んでこれぞ探しもとめた本であるという感にうたれた.引きずりこまれるように時間を忘れ読み耽った.外科にも高名なCondon,Nyhusの著になる“Manual of Surgical Therapeutics”があるが,同じ専門領域のせいか,この本ほどの感激はなかった.日本語のせいかと思い原著をとりよせてみた.原著のもつ良さに再び感激したと同時に,翻訳者のきめ細い配慮も同時に感じとることができた.これが本書に初めて接した実感である.
序によれば本書はワシントン大学4年生の内科手引書であるという.編集者がチーフレジデントであることも驚きである,本書は22章からなるが総頁数500でハンディなものである,項目を見るかぎりPO形式ではなく,従来のテキストと変らない.しかしすべての章において個々の患者に合った治療方針のたて方,各治療法の意義と限界・適応・病態生理学的および薬理学的知識・実際の治療法・薬剤の投与量および投与法・副作用などいずれも最新の実践的治療法がのべられており,この本一冊あれば診断をし,どのような治療を行えばよいか,たちどころに分る仕組みになっている.
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