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最近欧米ではレーザー光糸泉を用いての内阻鏡的レーザー止血法を消化管出血症例に臨床的に盛んに試み,良好な止血効果を認める報告が多い1)2).わが国でも1978年に旭川医大の水島ら3)により出血性胃潰瘍症例に対してMedilas(西独M.B.B.社製)によるNd-YAGレーザーを用いて」止血法が試みられて以来,数施設で内視鏡的レーザー止血法が行われ始めた.しかし従来の報告では内視鏡的レーザー止血法はすべて直視型ファイバースコープ(以下F.S.と略す)を用いてしか試みられていない.これは主にレーザー光線を伝達するquarz fiberやplastic fiberのflexibilityの制限によるためと考えられる.われわれはレーザー光線の伝達装置に400μのquartz coreにシリコンをcladし,テフロンで覆った総径800μのquarz fiberを,内径1.8mm,外径2.2mmの保護テフロン管内に挿入したシステムを使用している.このquarz fiberを内包したテフロン管をF.S.の生険鉗子チャンネル(多くは内径約2.8mm)内に挿入してレーザー光線をquarz fiberを通してF.S.先端より照射できる.この伝達装置を用いればMedilasの如くquartz保護のためにF.S.先端の鉗子を保護ガラスで覆う必要がない.それ故テフロン管とquarz fiberの間の間隙を利用して,照射野を明瞭にするためのCO2ガスjetや洗滌水フラッシュをテフロン管先端より噴出することが可能である.またMedilasの如く特殊な2チャンネル型F.S.を必要とすることはない.
今回この伝達機構を用いれば側視型F.S.にても内視鏡的レーザー止血法の応用が可能であることが判明したので報告する.今回の実験にはquartz coreが400μと600μの2種のquarz fiberを用いた.両種のquarz fiberを用いてもNEC-SL115から発するNd-YAGレーザーは側視型F.S.(今回はGF-B3を使月)の先端から30~50ワットまで,鉗子起上アングルを最大にして約70°の角度をquarz fiberに負荷してもquarz fiberを何ら損傷することなく伝達が可能であった,そこでヘパリン化された成犬の胃の胃角小彎前壁寄りに出血性胃潰瘍をQuinton ulcer maker4)により経口的に作製し(Fig. 1),Nd-YAGレーザー照射による内視鏡的止血法をquarz fiber先端と潰瘍との距離を約1cmに保つようにして試みた.50ワットのNd-YAGレーザー照射出力で3秒間の照射を3回繰り返すと潰瘍からの出血は穿孔を生ずることなくほぼ完令に止血された(Fig. 2).
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