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書評「要説 膵・胆道病学」
本間 達二
1
1信州大学
pp.200
発行日 1980年2月25日
Published Date 1980/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106719
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膵臓についてのMonographは,古くは限られており,国内のいくつかの論文で出典が同一だったこともあった.最近はそのようなこともなく,英文・独文の単行本もあり,国内では,山形倣一氏(南山堂),青山進午氏一膵臓病研究会(医学書院),織田・石井・内藤氏(中外医学社)などの書物がすでに刊行されよく利用されている.築山氏,名古屋大膵臓グループなどそれぞれ特徴をもった視点から単行本をまとめており,おのおのに参照すべき内容を具えている.
この度,「要説膵・胆道病学」(H. Sarles,A. Gerolami著,中村耕三,吉森正喜訳)を通読した.上に述べたように,多数の膵臓についての書物が国内でこれまで出版されているのに,屋上屋を重ねる危惧を少しばかり持っていた.しかし,「要説」(以下簡単にこのように記す)の読後感はひと味違っていた.元来が,肝・膵・胆で成り立った書物を膵・胆のみ訳して小冊子でまとめたことは,肝臓病についてすでに日本で多数の普及した成書のある現状を考慮すれば,達見であったと思われる.内容を一覧すればすぐわかるが膵・胆を扱っていながら写真が全くなく,表はわずかに1つである.図は,本質を示すに必要でかつ十分の表現のものが16コ挿入されている.本書が,学生や研修医を対象に書かれたものとはいえ,おもいきった簡略さにまず驚かされるが,読み進むにつれて敬意を覚えるようになる.それは,記述の内容が簡潔でありながらも類書に比をみない含意のものだからである.
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