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われわれ臨床医家が,肝臓,胆道,膵臓などの疾患に関し,その診断について胆道系の状態をX線学的に少しでも詳しく知りたいという念願の切なるものがあるということは,またそれがきわめて大なる意義を持つものであるからである.従来.実施されてきた胆囊造影法で,胆囊も胆管も全く造影されないことがしばしばあることは,臨床医家のよく経験するところであるが,しかし,それがまた病的状態を意味することが多いので,何とか胆道造影法を工夫してこれを明らかにすることこそ,この疑問を解明する大きな鍵であると思う.すなわち,それによって胆道閉塞の有無,ひいては黄疸の鑑別診断,肝内,肝外胆道,胆囊の模様,膵疾患のX線診断,乳頭部病変の意義など明らかにされつつある.今まで,この種の検査はわれわれ内科教室でも時々実施はしてきたが,主として外科医によりその手術症例で行なわれてきた.近年,X線テレビの応用とそれに伴う手技の研究,改善によって,内科医においても安全に実施しうる段階になってきた.
本書の著者達はいずれも,私が千葉大第一内科教室に在職していたとき,この方面の研究を担当し,現在なお熱心に研究を続けている若い研究者達である.本著書を見るに,経皮的胆道造影法の歴史にはじまり,その方法,またその応用については適応と成績,ことに黄疸の診断について書かれている.また胆管穿刺法は大切な手技であるが,その基礎的知識より穿刺の方法について詳述されている.また臨床的に応用するうえで最も大切な合併症,禁忌,その対策などについてもよく書いてある.また著者達が強調しているところの胆道像読影の基本と考え方は,そのまま一般造影にもあてはめて応用しうるものと考えられる.また経皮的胆道造影法による実際の症例につき,肝疾患,胆道疾患,膵疾患など写真とともに詳述し,あわせて低緊張性十二指腸造影法についてもその読影と実際について症例をあげて記載されている.
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