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書評「がん診療レジデントマニュアル」
田部井 敏夫
pp.1062
発行日 1997年7月25日
Published Date 1997/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104968
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癌に対する研究と治療は,ここ数年の間に目覚ましく進歩しており,現在では早期癌を含めると約50%の癌は治癒するようになっている.しかし,癌の罹患率は年々上昇しており,最近では3.5人に1人は癌で死亡している.癌治療の最前線では,機能温存を図りながら治癒率の向上をめざす外科治療や放射線治療,標準的治療法の確立と新規薬剤の導入により治癒や生存期間の延長をめざす内科治療を積極的に行っている.また近い将来,遺伝子治療という手法も臨床に応用できると思われる.一方,治癒が期待できない癌に対しては,患者のQOLを低下させずに,人間らしさを保ったまま終末期を迎えることができるように緩和医療が実践されている.この日進月歩の癌医療の現場から内容豊富なマニュアルが編み出された.
現在,癌医療の分野においても専門化・細分化が顕著である.国立がんセンターのレジデントは,専門分野の癌治療のスペシャリストであると同時に,自分の専門以外の癌にも対応できる,癌医療のオールラウンドプレイヤーとなるように教育を受けている.この本は,国立がんセンター中央病院内科のチーフレジデントらが,日常の診療の場で行っている治療内容をコンパクトにまとめたマニュアルである.患者の権利を尊重し,十分なインフォームド・コンセントの下に治療を行うことを原則としている.
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