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編集後記
八尾 恒良
pp.966
発行日 1989年8月25日
Published Date 1989/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106551
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本号の編集後記は心躍りつつ筆をとる心境にはならない.病理面では岩渕論文は遅れて読めず,渡辺教授の序説と岩下論文からは,臨床に密接した内容が汲み取りにくいからである.これは病理学的には新しい染色法や電顕によって解明されたカルチノイド産生物質の知識を基に,その定義,分類,発生などがメインテーマにされているの対し,臨床では臨床的に捉えられる機能の有無を問題にしているせいであろう.もちろん,基礎的知識のフィードバックが,小泉のreviewによる主張―クラシックなセロトニン産生に基づく症状のみをカルチノイド症候群とするのではなく,カルチノイド腫瘍が産生する種々のホルモンによってもたらされる症状として捉えたい―に連らなることは理解できるが…….渡辺教授が今後の魅力ある課題としている産生物質の量と臨床症状との相関の解明が待たれる.
臨床の面では9mm以下の直腸カルチノイドはポリペクトミーで治療しても大丈夫らしいという石川論文が注目される.しかし,症例が少なく今後の検討で結論が出されるべきであろう.また,この論文でカルチノイドが良性と悪性の2つに分けられるという従来の記載を踏襲しているのが気がかりである.胃癌でも粘膜内癌は良性か?と言いたくなるからである.
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