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書評「―スタンダードテキスト―腹腔鏡下外科手術―Surgical Laparoscopy」
比企 能樹
1
1北里大学・外科
pp.1052
発行日 1993年9月25日
Published Date 1993/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106260
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Zuckerの名前は,腹腔鏡下手術を行っている日本の外科医の間では,知らない人はない.私は久留米(第3回内視鏡下外科手術研究会)で掛川暉夫会長に紹介されて初めて彼と直接話をする機会を与えられた.彼は,腹腔鏡下手術は一般外科の劇的な変革であるとまで主張した.彼の意見に私が同意し,彼が本物であると判断した裏には次のようなやりとりがあった.つまり,この手術を行うにあたって,臨床応用の際には必ず新しい術式のための原理を理解することが重要である,従来の手術術式を知り,新しい術式の原理を知る,これが原点である,と.この考え方は,極めて当然のことのように聞こえるが,なかなか含蓄のある言葉として私に響いた.そこで彼の特別講演を聴き,彼が本当にまじめにこの術式を考え,しかも医学の歴史の1つの柱たりうる出来事であるとの自信を持ってこれにあたっていることがよく理解された.
今般発刊されたKarl A. Zucker編集の「Surgical Laparoscopy」の日本語訳「スタンダードテキスト 腹腔鏡下外科手術」を拝見して,まず私の目に飛び込んだのは,編者Zuckerの序にある次の一節である.“腹腔鏡下外科手術が,抗生物質の発見,輸血,麻酔法の発達などと同様の意義を持つ歴史的出来事のひとつとして加えられるのは間違いない…”とある文章で,彼自身の大変な自信と,この術式に対する絶大な想い入れとを感ぜずにはいられない.
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