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大腸のポリペクトミーが日常診療の中でこれだけ頻繁に行われるようになった結果,ポリペクトミー後の経過観察の仕方が大きな問題になってきた.腸切除後の潰瘍の治癒経過を観察したり,有茎性腺腫の摘除後の局所再発の有無を確認する目的で何度も内視鏡検査を行うことは,もはやルーチン検査としての妥当性が認められなくなってきた.妥当でないというよりは,むしろ無駄な検査で行うべきではないと言うべきであろう.初めから厳しい苦言を呈するのは,本特集の目的とするところが大腸腫瘍に対するポリペクトミーあるいは大腸切除後に,一般的に行われていると推察される経過観察の仕方に警鐘を与えることにあるからにほかならない.
大腸にひとたび腺腫,癌などの腫瘍性病変が発生すると,その粘膜に新たに腫瘍性病変が発生する頻度が高くなるということはよく知られている.すなわち,腺腫に対するポリペクトミー,癌に対する腸切除が行われた残存大腸は大腸腫瘍発生の高危険臓器であり,そのように認識して対処しなければならないのである.単に腺腫を摘除した跡や吻合部のみに注意を払い,腫瘍発生の頻度の高い広範囲の大腸粘膜の観察を怠っては第2の腫瘍を見逃すことにもなりかねない.したがって,ポリペクトミーおよび大腸癌手術の後には,新生する腫瘍性病変の早期発見のために,大腸全体の定期的な検査が必要となってくる.これが単純な経過観察(follow-up)と異なり,サーベイランス(surveillance)と呼ばれるゆえんである.大腸癌手術後には,局所再発の早期発見を目的としたサーベイランスが必要であるが,大腸全体のサーベイランスも同様に重要であり,特に局所再発の危険が去った3~5年以後は,ポリペクトミー後と同じ目的でサーベイランスを行うことが必要になってくる.
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