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書評「―医師・看護婦・歯科医師・薬剤師・医療技術者のための―アメリカ医学留学の手引 第5版」
中西 睦子
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1広島大学医学部保健学科
pp.318
発行日 1994年3月25日
Published Date 1994/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105753
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タイトルの示す通りずばり実用書の書である.そうでありながら,これが読んでいてたいへんおもしろい.なぜかというと,いつもは医療関係職として一括されていたさまざまな職種の近くて遠い情報が,ここでは一挙に1つの全体像を結ぶ.例えばアメリカ医学界の専門分化の構図とか,医学留学のためにお金を出す基金のリストとか,薬剤師教育の複線的なシステムとか,これまで断片的にしか知らなかった隣りの事情が手にとるようにわかるようになる.それによって,“みんなたいへんなのね”という共感と理解が生まれてくる.これは単なる副産物ではなくして,著者の深淵なる意図かもしれない.
構成は,まずは医師の留学から始まり,看護婦の留学,歯科医師の留学,医療技術者の留学と続く.ここまでは既に免許を持ったそれぞれの専門家の海外研修が念頭に置かれている.周知のように,留学には越えなければならないいくつものハードルがある.むろん語学試験もその1つである.この本はそうしたいくつものハードルを賢明に越える方途を,受け入れ側のシステムを詳述することによって職種ごとに丹念に示してくれる.そして職能団体や監督機関,斡旋機関など,関連機関へのアクセスをさりげなく勧め,連絡先を示すなどたいへんにゆき届いている.
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