「脳と神経」への手紙
青木友浩先生へ
太田 浩嗣
1
1筑豊労災病院脳神経外科
pp.429
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100291
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拝復
貴重なご意見ありがとうございました。特発性低髄液圧症候群(SIH)のMRI所見として,本文にも記載したように後頭蓋窩の緊満化が挙げられ,これにより中脳水道が明瞭になったものと考えております。さらに,第3脳室をはじめとした脳室の拡大はありませんでした。発症時には明らかな起立性頭痛の症状で,術前CTで血腫が脳室を圧迫するまでに溜まっているにもかかわらず,術中血腫は液状で,流出は弱く,頭蓋内圧が高いとは考えにくいものと思われます。
また,術後のMRIでは後頭蓋窩の緊満化は軽減し,滑車神経の牽引も軽減したことで滑車神経麻痺の改善をきたしたものと考えておりますが(引用文献2,5),術直前には軽度の意識障害があり滑車神経麻痺の評価は難しく,起立性頭痛の軽快後の自然経過での改善か(頭痛の改善後,時期をおいて複視も改善している報告が多いこと),頭蓋内圧は高くはないにしろ,慢性硬膜下血腫の増悪における頭蓋内の圧環境の変化かは立証できず,「憶測の領域」という記載としました。しかし,本文に記載したように,SIHにより滑車神経麻痺が生じたこと,および,外科的加療が改善の一因となったことは十分推察できるものと考えております。
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