特集 Merry Christmas
足萎えも歡喜にみちて
土谷 勉
1
1青松園
pp.21-22
発行日 1949年12月15日
Published Date 1949/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906572
- 有料閲覧
- 文献概要
内海の眺望をほしいまゝに,島山の中腹に祈堂がある。長汀の松間に並ぶ病棟の窓からも,キラキラ光るスレート葺きの屋根は見えるし,祈の鐘は小さい島中を隅々まで淨めて,遠く内海の波間に木靈した。老いも若きも,男も女も祈堂に通う山砂利の小徑を上つて行く。その筈だ。クリスマスだ。青松園650の病友にとつては魂のふるさとなのだ。
盲人もいる。松葉杖もいる。足萎えもいる。ヨチヨチとノロノロと上つて行く。元氣な者は弱い者をいたわり,呼び合つている子供もいる。主人の手を引く奧さん。不自由な奧さんを背負う旦那さん。健康の度合や病状はそれぞれちがつていても,一樣に人の顔は歡喜に輝いている。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.