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編集後記
斉藤 裕輔
pp.1346
発行日 2006年8月25日
Published Date 2006/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104330
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本号は拡大内視鏡やEUSを併用しない,通常内視鏡による大腸sm癌の深達度診断,特に内視鏡治療の根治基準となった垂直浸潤距離1,000μmの診断について若手とベテランの診断能を比較するとともに,診断の根拠となった所見の拾い上げ方について比較した.立石論文では,大腸癌取扱い規約に盛り込まれた計測法の有用性が再確認された.また症例検討では,症例の選択にやや問題があったため,若手とベテランで診断能に差はみられなかった.しかし,緊満感や陥凹の有無などの深達度診断に重要な所見において,ベテランは比較的所見の拾い上げが一致していたが,若手では拾い上げ方にばらつきがみられることが明らかとなった.このことは,ガイドライン作成時には所見項目のさらなる統一とともに,浸潤所見の特徴について典型的な症例を呈示しながら解説することの重要性を示唆するものと考える.同時に味岡論文ではベテランの施設においても浸潤距離の測定法の施設間のばらつきにより,診断されている浸潤距離そのものが1,000μmを挟んで前後する可能性という根本的な問題点が指摘された.これらの問題点を含んでいるものの,本号の多くの症例,座談会でのベテランの所見の拾い上げ方を読み返すことで,通常内視鏡のみで1,000μm未満か,以上かの診断能が向上し,明日からの臨床に役立つことを期待する.
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