--------------------
書評「Practical Flexible Sigmoidoscopy」
長廻 紘
1
1群馬県立がんセンター
pp.930
発行日 1996年6月25日
Published Date 1996/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104184
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
日本では本書のようなmonographは書く人がなく,したがって読む人もないだろう.しかし,それではよくないと思うので,この欄を借りて本書の重要性を述べたい.sigmoidoscopeとは,大腸の一部である直腸・S状結腸を見る,あるいはそこだけしか見ることのできない内視鏡であるのは言うまでもない.日本人(と一般化してよいかどうかは別として)は,医者も患者も大腸全体を見るcolonoscopeがあるのに,なぜ,半分しか見ることのできないsigmoidoscopeを使うのか,と本気でも,まして建て前では,考えるタイプの人種である.完全主義と言えば聞こえはよいが,全体の利害得失を考えることを潔しとしない傾向がある.
大腸癌の2/3が直腸・S状結腸にある.colonoscopyは1日10人に施行でき,sigmoidoscopyは1日30人に施行できるとすると,日本人はsigmoidoscopyでカバーできなかった部分のことが異常に気になり,sigmoidoscopyのほうがよいと主張できる人は極めて少ないか,主張しても元気がない.アメリカの医師の中には単位期間により多く大腸癌が診断できるのならsigmoidoscopyのほうがよい,と堂々と主張する人がいるようだ.現にこういう本が書かれているのだから.これから医療費が大きな社会問題になろうとしているとき,われわれもよく考えなければいけない.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.