特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
陥凹型胃腺腫(depressed adenoma of the stomach)
磨伊 正義
1
1金沢大学がん研附属病院外科
pp.338
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104010
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胃腺腫の肉眼型のほとんどは隆起型でかつ特定の病変に限局して命名される傾向にある.しかし,異型上皮として取り扱われるものの中に,平坦ならびに陥凹の病変もまれながら経験され,その病態はいまだ明らかではない.この陥凹型胃腺腫は肉眼型には陥凹形態をとりながら組織学的には隆起型腺腫と全く同様の異型を示す病変である.
一方,この陥凹型腺腫は臨床的にその肉眼形態がⅡc型早期胃癌と酷似しており,生検でもGroup Ⅲ,ときにⅣの所見が得られ,臨床的対応に苦慮することがある.Nakamuraら(Cancer 62: 2197,1988)は,胃腺腫357病変中40病変(11%)に陥凹型腺腫を報告し,これらの病変は肉眼的にⅡC型早期胃癌との鑑別が困難であったとしている.組織学的にも種々の異型を示す腺管腺腫(tubular adenoma)を呈し,隣接する粘膜とは鮮明に境界されていた.病変は基本的には陥凹部粘膜表層が異型腺管に覆われていたが,約1/3の症例は全層性に異型腺管に置換されていたという.Fig. 1はその1例で,胃角部後壁大彎寄りに粘膜集中を伴う浅い陥凹性の病変がみられる.粘膜ひだの中断,虫食い所見を呈し,Ⅱc型早期胃癌と酷似している。組織学的には陥凹部の粘膜表層が異型腺管に置換され,隣接する粘膜とは鮮明に境界されている(Fig. 2).
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